2012/07/08

Non Adhesive Binding with Accordion Guard





                                    The Eve of St. Agnes                                         


第7回東京製本倶楽部展「本をめぐる話」が、目黒区立美術館の区民ギャラリーで7月10日(火)から開催されます。詳細は、東京製本倶楽部のサイトをご覧下さい。

私は今度のテーマ「本をめぐる話」とは、全く関係のないジョン・キーツ ( John Keats ) の詩の本を出品します。もとの本は、GuildfordA.C.Curtisから出版されたThe Astolat Oakleaf Seriesの1冊です。値段のわりに、紙も印刷も良い感じで、ところどころに入っている樫(Oak)の実と葉のイラストもなかなか洒落ています。余談ですが、この出版社は私の卒業した学校と同じGuildfordというところにあったので、なんとなく親しみを感じています。



この本は、2枚1折で、4折しかありません。このように折数の少ない本を製本する時、私はアコーデオン状の和紙に綴じ込む方法をよく使っています。
写真の本は、今回の作品ではありませんが、同じ構造です。アコーデオン状になっているグレーの紙に綴じ込んである様子がお解りいただけると思います。グレーの紙の両端は、表紙ボードの内側に貼られ、その後表紙用の素材でカバーされます。
この構造は本の開きがとても良く、丸み出し、耳出しをしないので、本自体がいたまないところが良い点ですが、写真のように色のある素材でアコーデオン・ガードを作ると、折ごとにガードが見えてしまい、少しうるさい感じになることがあります。今回の作品では外側は柄紙を使用していますが、内側に本文紙と同じ色の和紙で裏打ちして、ガード部分が目立たないようにしてあります。




綴じは、Link stitchや、Chain stitch にすることもありますが、今回は、綴葉装の綴じで作りました。アコーデオン状の紙は見えますが、綴じの部分が隠れるよう装飾的に切り抜いた裏革で覆っています。同じ構造でも、アコーデオン状の紙が見えないように背を革で覆ってしまう場合もあります。Design Binding”Nijinsky”がこの構造で作られた本です。

“ The Eve of St. Agnes”は、聖アグネス祭の前夜に、将来夫となる人の顔が見えるという伝説をもとに書かれたキーツの詩です。この詩を主題にして、ラファエル前派の画家、John Everett Millais William Holman Huntが絵を描いています。


表紙は、聖アグネスとブバリアの花をモチーフにデザインしました。
下記は、制作過程の印刷や、切り抜きの写真です。


聖アグネスのモザイク画の写真と、それから描きおこした原画。


ソフト・プレート・オフセットによる印刷。上記2枚はインクの具合が気にいらず、使わなかったものです。


ブバリアの花の原画。


雁皮紙に印刷したものを2枚重ねてみたところ。


インクの量や時間を調節して試しに印刷してみたもの。


薄いスウェードに花の図を印刷したもの(左)と、 印刷の線にそって切り抜いたもの(右)


薄三椏紙に花の図を印刷し、線に剃ってきりぬいたもの。




これらを組み合わせて、このような作品を作りました。