2012/05/14

The Library Style









私の所属している東京製本倶楽部は、いろいろな活動を行っていますが、定期的に勉強会を開いておられるようです。私はロンドンに居る為に、そのような会には参加できないのですが、先日、その勉強会の関係で、「英国のライブラリー・スタイルとはどのようなものですか」とのご質問をいただきました。

ライブラリー・スタイルは、本の本体と表紙のボードがしっかりとつながっている、丈夫で耐久性のある本です。出来上がりはともすると野暮ったい感じになりますが、堅固なつくりで、重たい本や、頻繁に使う本の製本に向いているスタイルです。The Thames & Hudson社から出版されたArthur W. Johnson氏による Manual of Bookbindingに由来や作り方が詳しく記載されています。図解入りでわかりやすく説明しててあるので、作ってみたい方はこれを参考にしてください。この本ではタイトバックで作るようになっていますが、私はGuildfordで、ホローバックでの作り方を習いました。両方ともライブラリー・スタイルの本として認められていますし、細かなところは人によって作り方が多少異なります。
先日、ライブラリー・スタイルで本を作りましたので、特徴と思われる部分のみを写真にとってみました。説明は、不十分なところがあるかもしれませんが、ご容赦ください。




まず、表紙ボードは、厚いミルボード(硬質)と薄いグレーボードを張り合わせたものを使います。ボードを張り合わせる時、背から3cmぐらいまではボンドを塗らず、後で間に紙を挟めるようにしておきます。写真の本は、薄い本なので全体的に薄いボードを使用しましたが、本来はもう少し厚めのボードで作ります。



小口側の角は少し削って丸くします。





同寸法のボードを張り合わせる方法と、Harrison Grove と呼ばれる少しずらして貼る方法があります。写真のボードは、Harrison Groveのボードです。溝の分グレーボードの幅が広くなっています。





見返しは、Concealed Cloth Jointか、Exposed Cloth Jointのどちらかで作ったものを使います。写真の見返しは、Concealed Cloth Jointで、白く細長いのがクロスです。これは、本が出来た時には見えなくなります。





テープ綴じで、見返しも綴じこみます。見返しと最初の折、最後の折は、リンクステッチにします。




丸み出し、耳出しは、普通とかわりありませんが、寒冷紗を貼った後に貼るホローは、one on four offぐらいで作ります。(ホローはクータのことです。クータの本に貼る側が1枚で、外側を4枚重ねにして厚く作るということです)。ホローは、本の天地より長めにつくり、後にボードの天地に揃えて切ります。


写真の本は、上記で説明したホローの作り方ではなく、one on two offの上にマニラ紙を貼って作ることにしました。上の写真は、one on two off のホローを貼ったところです。外側を厚くしていないので、テープの厚みのでこぼこが、しっかりと見えています。





綴じ込んだ見返しの保護紙を使ってテープをラミネートして、それを張り合わせたボードに挟みます。まず、保護紙を写真のように折まげます。





折り曲げた部分の保護紙にボンドを塗り、寒冷紗、テープを包み込むようにして貼ります。





余分な保護紙は背のところで、切り取ります。





このラミネート状態のものを、ボードの間に挟み込みます。





革でくるむ前に、背のジョイントに、折り曲げる革の幅分切り込みを入れます。




これは、ホローバックなので、ホローの部分にも同じく切り込みをいれます。





花切れを縫うこともありますが、縫わない場合は、ヘッドキャップをの部分に麻ひもを包み込みます。





背のジョイントには溝があります。溝を付けるのに写真のように編み棒を使います。





この写真は、最後に見返しを貼る前の段階です。まず、写真のようにクロスをボードに貼ります。それから写真の左上にある、革との段差を埋める為の紙を貼った後に、見返しを貼ります。




実用重視ですので、通常は半革装(ジョイントの部分の革鋤はしないで厚いまま使用)、もしくは総バックラムで作ります。但し、ヴェラムなどの引きの強い素材で本を作る時は、ライブラリー・スタイルの構造で作ります。このブログのDesign Bindingページで、最初に出てくる本  Down The River は、総ベラム装なのでライブラリー・スタイルで作られています。